弁護士ブログ
女性総合法律事務所ラレーヌビクトリア
ジェンダーバイアスを意識した養育費
昨今、ジェンダーバイアスと言う言葉をよく聞きますよね。
ジェンダーバイアスとは男女の役割に無意識に固定的な観念を持つことや、そのために社会的な評価や扱いが差別的になることを指す言葉です。
アンコンシャスバイアスとは無意識による思い込みです。
ジェンダーバイアスは、長い年月を掛けて社会に掛かったものなので、誰もその実情(深刻さ)を知る人はいないと私は思っています。
そのため、今まで普通だと思っていたことや何も感じてこなかったことを含め、すべての事象について、今一度自分自身でよく考えてみることを習慣づけています。
そういうことを習慣に致しますと、思った以上に様々なことに気づくことができ、自分でも驚くばかりです。
養育費算定表も一つです。
●0歳から14歳までが同じ金額になっています。
でも人が成長すると生活費は確実に増えるのであり、赤ちゃんと中学2年生の子どもが同じ生活費ということは無いということに辿り着きます。
●大学進学率は令和4年度文部科学省による学校基本調査によりますと、高等教育機関進学率は83.8%で過去最高です。
●ひとり親女性は、育児家事管理等の家庭内活動と稼働という家庭外活動を単独履行しなければならない社会的負荷というジェンダーバイアスの影響を特に顕著に受ける為、深刻な稼働能力の制限を受けることになります。
そこで現在、当事務所では、養育費につき以下のような内容で請求しています。
1. 相手方は、申立人に対し、離婚成立の日から申立人が満20歳に達する日の属する月まで毎月前月末日限り社会的に相当な養育費を支払え。
なお、出生時から中学2年生まで生活費が同一ということはあり得ないから、その支払額は、
申立人が
小学校進学時以降月額社会的相当額 ●円
中学校進学時以降月額社会的相当額 ●円
高校進学時以降月額社会的相当額 ●円
とする。
2. 前項の定期金払義務は、未成年者が満20歳に達した時点で未成年者が専門学校・大学等の高等教育機関に進学している場合、卒業した日の属する年度の年度末の属する月まで延長する。
3. 高校以降の高等教育機関に進学する場合、第1項記載の養育費定期金払に加えて
進学に要する費用(塾代、受験料、入学金含む)
授業料
教科書代
修学旅行代
通学交通費
県外下宿生活を要する場合の生活費等一切の学資は相手方が負担せよ。
あくまでも請求であり、現時点においては、このとおりの内容を裁判所で当然に認めてもらえるというわけではありません。
しかし、日本国におけるひとり親女性に掛かる深刻なジェンダーバイアスをベースに致しますとこのような請求を話し合いのスタート地点にすることが不可欠であると思います。
当月分を毎月前月末日までに払ってもらうことも至極当然のことであると思いますが、多くの事例で後払い(当月分を当月末日限り)になっています。
なお、日本国におけるひとり親女性に掛かる深刻なジェンダーバイアスにつきましては、内閣府HPにたくさん統計等の資料が掲載されています。
養育費は、先の長い話であり、とても重要な権利です。
内閣府HPにおいても、
令和5年4月25日付【養育費受領率の達成目標】において
希望する全てのひとり親世帯が養育費を受領できるようにすることが重要であるという認識の下、まずは2031年に、全体の受領率(養育費の取り決めの有無にかかわらない受領率)を40%とし、養育費の取り決めをしている場合の受領率を70%とすることを目指す
と目標設定されています。
養育費は、離婚による不利益を受けることなく成長していくこどもの幸福追求の権利であり、日本国のひとり親女性に掛かる深刻なジェンダーバイアスを補正する為にも不可欠のものであります。
どうぞお気軽にご相談下さい。
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